2011年6月4日土曜日

シカゴ 2 - Nursing Home (介護施設)

二日目はピーターと車で3箇所のNursing Home (ナーシング・ホーム、介護施設)を回った。今年の頭から始まったこの内装リノベーションプロジェクトは既に4箇所で動いているが、いつもピーターの撮った写真で見るだけで、実際に自分の目で見るのは初めてだった。

ナーシングホームとは、常に病院のお世話になりながら生活しなければならない人などが生活する、看護付きの施設。看護婦はいるが、ドクターの居ない病院の様なところ。そこに居る人達は "
Patient (患者)" とは呼ばれず、"Residence (居住者)" と呼ばれる。

今回プロジェクトになっている施設の殆どは、イリノイ州がサポートしている。高額なプライベートの施設と比べると、中はかなり寂しい物だった。

契約上、写真を公開できないのでGoogleの画像で検索してみた。そこそこの施設の写真が出てくる。
画像リンク

我々が見た場所は、こんなに綺麗な物ではなかった。

ある施設で、居住者の部屋の実測をしなければならなかったので、ナースに空いている部屋を教えて貰った。6m x 4m程の部屋が天井のカーテンで3等分され、そのうちの2つに汚い古いベッドが置かれていた。ベッドと反対側の壁には小さな引き出し付きのキャビネットがあり、その上にはくすんだガラスのコップに入ったままの飲みかけの水。車椅子や便座が散乱し、奥の窓からは殆ど日が入らず、壁の蛍光灯だけで照らされた部屋は暗く湿っぽかった。

物置として使っている部屋にしては、シャンプーや本など、個人的な生活用品が多い。
ピーターに尋ねた。

”Do you think this room is still functioning as a residence room now? "
(この部屋、もしかして今でもだれか住んでると思う?)

"Oh yeah. She is probably just stepping out for a moment."
(勿論住んでるだろ。多分ちょと他の部屋に行ってるだけだよ。)

ペンの先で傷だらけクローゼットのドアを恐る恐る開けながら、ピーターが答えた。

身寄りが無い、経済的な問題を抱えている、そういう人達が殆どに思えた。

"It's hard to imagine how I would feel if I were to live in that place at the end of my life..."
(もし人生の最後に自分があそこに住まなければならないとしたら、どんな風に思うのか・・・想像も出来ないな・・・。)

次の施設へ向かう車の中でピーターに言った。

"It must be tough..."
(悲しいだろうな・・・)

前を見たままピーターが静かに答えた。

施設自体はとても重宝されているし、必要としている人達は沢山いる。とても有難いものだ。問題は内装。苦難を抱えた人達が、前向きになれたり少しでも楽しい時間を過ごせる様な雰囲気では全くない。

よく今まであの様な空間で我慢して来れたな、と言うのが率直な感想だが、”酷い”と言うのは多分健常者の我々の一方的な見解で、一概には言い切れない。

今まで受けれなかった介護を毎日受けれる様になり、とても安心出来て幸せに思っている人。

自宅で世話をしてくれる家族が居なく、寂しい思いはしているが、ここには話が出来る人達が居て有難く思っている人。

精神異常の為、それすら考える事のない人。

色々な人達が様々な思いを胸に、一緒に時間を過ごしている様に感じられた。回復を目指しているにしても、家族の迎えを待っているにしても、ただ死を待っているにしても。


ピーターの家に戻った時は既に夜9時前だったので、夕食にタイ料理を買って帰り、仕事から戻った奥さんのエバと食べているところに、彼等の友達のクリスがやって来た。クリスはゲイで、イリノイ州で同性愛者の結婚がやっと今週認められたので、次の日、市が主催する合同結婚式に参加する予定になっていた。


花粉症がおさまらない上に寝不足、そして1日中実測したり写真を撮ったり、新しい人に会ったり・・・この日もとても疲れた。


ピーターの仕事机

Hiroki

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