2016年11月25日金曜日

Cookie House Project - Tokyo Japan

先日完成させた東京のCOMME PARIS(comme-paris.com)とのコラボで, Hiroki Uchida Design Labが主催するアートスタジオ、”Studio Lia" のクラスとしてCookie House Projectを、11月12日と19日に開催した。

一般的に呼ばれるヘクセンハウスやジンジャーブレッドハウスなら、ウェブ等を見て似た物を作れば良いが、それでは自己表現にならない。我々が行うクラスは、型も完成イメージも無く、そこにある材料を用い、自分の想像力とアイデアで形を作って行く事が一番の目的。


”これじゃ厚すぎる” ”もうちょっと固めに” 等、何度も厚さ、サイズ、焼き加減をテストしながら、長方形のクッキーを一枚づつ焼いてもらった。材料はコムパリのサブレと同じ物なので、つまみ食いが止まらない・・・


コムパリ定番のカヌレ、フィナンシェとマドレーヌ。これらを自由に使って作っていく。
接着剤となるアイシングも、混ぜ物をする事で出来るだけ早く、堅く固まる様に工夫してもらった。特に子供たちは固まる前に次々と重ねて行くので、それに対応する必要がある。



サイドで用意した棒状のお菓子を使って、壁の支え方等の見本や、カヌレを斜めに切って煙突にするやり方等、幾つか見本を作成。




小学校低学年の子たちは、お母さんの手を借りながら自分の好きな形を作っていったが、大人と比べると、迷いがない上に発想が自由なのでとにかく早い!






面白いアイデアも沢山。









 


 少しだけ手を貸しながら歩き回っていると、出来上がって来た物にそれぞれの作者の性格が表れていて面白かった。細かな部分に拘る人、同じ物をどんどん作って重ねていく人、どの重ね方が良いか迷い続ける人。どれも全て”自分”で、出来上がった物全てが正解。







並べてみると、お菓子の町が出来上がった。





決まった形を作るために用意されたパーツを組み立てて、人と同じ物をどれだけ綺麗に組み立てられるか、という考え方は、手の器用さを比べているだけで機械にもできる。きちんとした形の物が出来上がると、完成度が高く思えるので達成感は確かに得られるが、それだけでは応用は効かなくなる上に、ゼロから何かを作りだす脳が育たない。それは、大人でも子供でも一緒。

また、”これが僕だよ” ”これが私だよ” と作品を通して自分を表現する事が大切。アートという物は、そういう物だと思う。

それが上手く出来たと思えても、下手だったと思えても、どちらでも良いから自分独自の物を作る機会を、今後も提供していきたい。ちなみに下のリンクは、カリフォルニアの我々のオフィスで7月に5日間連続で行った、紙で自分の家を作る”DREAM HOUSE PROJECT”。お菓子の町と比べてみると面白い。

今回ご参加下さった皆さま、有難う御座いました。日本とアメリカを繋ぐプロジェクトなど、今後も色々と考えて行きます。また是非ご参加ください。



Hiroki Uchida Design Lab
Studio Lia (www.hirokiuchidadesignlab.com/studiolia.html)





2016年11月16日水曜日

COMME PARIS - プロセス2

さて、田園調布に移転したコムパリ。お店は既にオープンして約2か月が経つが、”プロセス” という物はやはり面白いと思うので前回の続きを紹介。

大きな工事は業者さんにお願いし、仕上げ等は 9月に日本に来て手作りをした。





 工事業者さんの仕事はここでほぼ終了。白金店で使用していた床板、ドア等、どの様に再利用するかは決めていなかったが、取り敢えず全て運び込んでおいてもらった。



ペンキ塗りはコムパリの皆さんにも手伝ってもらって、グレーに白をマーブル状に混ぜ、わざとムラが出る様に塗った。色を重ねる事で平面に深みを出し、時間と共に変化する日の光が自然に様々な表情を作りだしてくれる様にした。木の枠は、木目を殺さない様に気を付けながらステインをし、深い色に調節。


以前の白金店で使用していた天井まで届く大きな白い棚を、なんとかして店の一番奥の壁に設置したかったので、取り敢えずバラしてみた。そして、


留めたり、



切ったり、



蹴ったり、



すると、何という事でしょ~ 大きな白い棚は、お店の奥に包まれるかの様に、ものの見事に収まるではありませんか。

匠は、既に取り付けてあったシンクすら加工したドアで囲い込み、棚の一部に見える様にしてしまいました。それだけではありません。高さを調節するためにベースキャビネットの下部を取り外し、それにより構造上弱くなってしまった個所を、枠組みを逆さにして上の棚と留める事で補うなど、様々なアイデアで一つづつクリアーして行ったのです。人は彼を、”ただの工作好き” と呼びます。






貰って来た大きなドアは、コンセント用の穴を開け、切断したり枠を外したりして、殺風景だったトイレの奥の壁に取り付けた。




前の店舗で使っていたドアは、足の上に乗せてガラスのテーブルに。



花のシャンデリアは、床に置いてある状態が綺麗だったので、コードの先をコンセントの差し込みプラグに取り換えてガラスのテーブルの下へ。





そして、オムライスを前に力尽きる。






ここまでをなんとか数日で終わらせ、急用の為アメリカへ急遽帰国。




ドリルも金槌も忘れていつもの海で癒されていると、オーナーの岩井さんからLINEが。


”これ、レジにいいかなと思って貰って来たんだけど、思ったより大きかったかもー。”


軽快な着信音と共に携帯の画面に現れた、恐怖の大きな水色の台。

一気に ”店” 感が出てしまった・・・


まぁ、オーナーが気に入った物がプロジェクトの途中で現場に突然登場する事はたまにあるけど、貰ってくる前にせめて大きさは測って・・・

Photoshopで色を変えてみたり、



 形を変えてみたりしたが何も良い案が出ず、 取り敢えず寝る事に。



次の日、朝食を取りながら思いついた案をペーパーナプキンに殴り書きし、写真を撮ってLINEで送信。


携帯の画面を通して店員の人たちに机をセットしてもらい、


うん。これならよし。”店” という感じが消えて面白くなったと思う。


奥の棚と天井に吊るすシャンデリアも、Photoshopで絵を作り方向性を伝えた。





そして、何とか9月の終わりに営業開始。ただ、店舗自体は納得出来るレベルには達していない。始めた事は、最後まで。という事で、11月1日に再度日本へ。



着いた次の日から、再びドリルと金槌を手に大工仕事。

棚の中のディスプレイとライティングを整え、







以前の店で使っていた床板は表面を磨いて綺麗にし、のこぎりでサイズに切って壁のアクセントとして再利用。






一番の課題は、始めから天井に付いていた10個の丸いダウンライト。


一般によく見る物で、現実味があり過ぎる。これは、新しいコムパリのコンセプトには合わない。勿論高いお金を出して綺麗なライトと取り換えれば良いのだけど、その程度の事は誰でも出来る。

日本にいても、アメリカにいても、こういう時はホームセンターと100均へ行き、万引きの視察と勘違いしている店員を引き連れながら、店内を数時間うろうろする。

今回は100均を数店回った末、かわいいプラスチックの容器を10個、業務用クリップ、ファイル用の丸い金具、そして針金を買ってきた。総額1300円+税。





 夜、暗い中で光を通すと思った通り綺麗だ。



容器のふたを本体と接着し、金具を通す穴を開ける。



自作の金具を使い、ダウンライトの中に吊るしてみる。電球はLEDだが、全く熱を発しないわけではない。特に電球の胴体のプラスチック部分は素手で触れない程熱くなる。熱はダウンライトのシェード上部に開いている穴から抜ける様になってはいるが、接着した容器の中の空気が膨張して蓋が外れて落ちたり、容器にヒビが入ったりしな様に、空気が抜ける為の小さな穴も開けておいた。



なかなか良い。反射した光が店内を明るくし、普通のダウンライトが一気にアップグレードされた。

ただ・・・

この色は、求めていた物ではない。白く明るく輝く雰囲気はいらない・・・

という事で、まずはLED電球を”昼白色”からオレンジがかった”電球色”に全て交換。さらに、
金色のスプレーで容器を塗装し、グレーと白のペイントで少し汚しを入れ、最後に上からまた軽く金色のスプレーを施す。


しかし、このままでは光が通りにくく店内がとても暗くなってしまうので、乾いた後に金だわしでゴシゴシと表面をこすり、わざと傷を付けながら色を落とす。

と、こんな感じ。表面の色は落ちるが、溝に入った色は残る。手前はまだ途中で、奥が完成品。





これなら全体の雰囲気と合う、我ながらなかなか良いアイデア。そして何より、交換したLED電球10個のコスト(計1万円)を除けば、スプレーや接着剤を入れても材料費は2000円程。絶対にプラスチックとは分からない。ここに書いてばらしちゃったけど・・・



先週、ショートフィルムの撮影にも使用された。店員役の子がとてもかわいかったのはさておき、天井のライトが良い味を出してくれている。



明日最後の写真を撮って、今回のプロジェクトは完成。20日にはアメリカに帰国。どんなお店も、普段の使い勝手によって色々と変わって行く。そこで働いている人は、その場に慣れてしまうので細かな事に気が付かなくなってしまう。出しっぱなしの段ボールや、点灯するのを忘れられたライト。無造作に壁に貼られたお知らせの紙や、色を間違えて取り換えられた電球。それらは確実にブランドのイメージを壊し、初めて来店されたお客さんに不本意な印象を与えてしまう。

ここから先は、お店で働く人次第。


Hiroki Uchida Design Lab
www.hirokiuchidadesignlab.com

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