2014年6月22日日曜日

中国出張 - 3: 娼婦に買われる

上海にいる間に、色々なショッピングモールを見て回った。殆どの物は、高級店が入っていようが何が入っていようが、普通の典型的なモールで、歩いていても何も感じる事は無い。つまり、店に用がある時以外は、来ても面白くもなんともない。

こんな感じ。



そんな中、歩き回る導線や他の階との関係(エスカレーターの位置や、吹き抜けからの見せ方等)に気を配ってデザインされていたのが、KERRY CENTERというモール。店に用が無くても、
モールに来て歩き回る事を楽しむ、という観点から見ると他のモールよりは遥かに優れていた。






もう一つはK11という、アートと自然をコンセプトにして作られたモール。地下にギャラリーもあり、行った時はモネ展をしていて人で溢れ返っていた。モール内は若い人でいっぱい。



内容も充実している。小さなモールで、通路が狭いという事も功を奏している。人が大勢いる様に見えるので、とても人気がある様に見える。実際人気があると思うが。そのうちこれを真似して、この大きいバージョンを作るディベロパーが出てくると思うが、よく吟味しないと大味になってしまい成功させるのは難しくなると思う。





エレベーターを降りた目の前に、日本で有名なABCクッキングスタジオを発見。
えー・・・、オーナーさんや働かれていた方々を知っているので少々コメントし辛いが、生意気な事を言わせて貰えば、デザイン的に特筆する所が無い上、色味がニュートラル過ぎて外の通路の延長の様に感じられたり、生徒なのかインストラクターなのか、中でボーっと立っている数人の人達が味気無さを増して、全くの個人的なデザインに関するその場の意見だが、ガラス張りにしている事が逆効果になってしまっている気がして少々残念だった・・・。まぁでも多分他の日は、人で埋まっているのだと思うが。





観光客向けではあるが、昔の建物を改装して作った新天地はとても良いアイデアだと思った。グレーの煉瓦はとても渋く趣があるうえ、モダンなデザインと大変良くマッチする。レストランの値段も、ローカルの人には高いかもしれないが、外国人には平均的な単価。ただ、一番奥にあるコンテンポラリーなショッピングモールが、ノスタルジックな雰囲気のエンドとしては全く機能しておらず非常に残念。






YuYuan Garden は素晴らしかった。モダンなショッピングモールは欧米のコピーなので何も目新しくないが、こういう古来の建築物はとても興味がある。出来上がった現代の物ではなく、全てのベースになっている物を知らないと、デザインする時に応用が出来ない。





ローカルの人たちの暮らし。


他の町で見た雨の日のハス。



ヘブン!





下の写真に写っている男は、今回一緒に上海に行った、ベトナム生まれの建築家T。この3日前に一緒に上海を観光し、信号待ちをしていると、二人組の20代と思われる女の子が僕に中国語で話しかけて来た。一人はあまり好みではないし、もう一人は全く好みではない。カメラを見せながら何か言っていたので、写真を撮って欲しいという事は伝わり撮ってあげた。撮り終えると今度は、僕と自分を交互に指さして何か言っているので、
" I'm sorry, but I don't speak Chinese." と言うと、なかなか分かりやすい英語で、
”北京からきました。一緒に写真? あなたはどこから来たのですか? 次はどこへ行くのですか?あそこは行きましたか?ホテルはどこですか?一緒に行きませんか?” 等など質問攻め。でも、荷物などから判断しても、夜の商売の人ではない様に見える普通の子たち。

既に信号は青だし、Tはなぜか知らん振りしてるし。ついて来られると迷惑なので、適当に話を切り上げて道を渡った。その後Tに ”ナンパされてんじゃーん” と色々とからかわれ、酒のつまみの話となった。

上海最終日、Nanjing RoadをTと一緒に歩いていると、一人の女の子が話しかけて来た。今度は、まぁ、いわゆる夜の斡旋業者だ、と自分で名乗った。まずはその子自体が並外れて好みではなかったので無視していると、Tがなぜかその子と話始めた。ずっと一緒に歩きながら、10分程話をしている。あとでからかう材料に、と写真を撮った後、完全に二人を無視して周りの建物を見ながら歩いていた。



暫くすると、

"OK. Deal! (ビジネス成立!)" とTが叫んでこっちをニンマリしながら振り向いた。

はぁ?と思い、Tを改心させるため腕を引っ張った。

”お前、やめとけって。何にしても、この子の紹介じゃ絶対だまされるって。”
 
”いや、僕は何も買っていないよ。ほら、昨日ナンパされてたじゃん。だからいけるかと
思ってさ、この子に君を売ったんだよ。”

!!!??? 

何の話をしているかと思えば・・・夜の商売を売りに来た斡旋業者に、逆に人を転売用に売りつけるとは・・・

やるなこのベトナム人。なかなかのビジネスセンス!これぞまさに逆転の発想!

・・・っと感心している場合ではない。せめてもう少し商談相手を選んでくれ。

その後、僕は二人を残し自分のホテルへ戻った。


(勿論ただの冗談の商談です。)




その夜は、シカゴ時代からの韓国人の友人と上海で会った。16-17年前、二人ともそれぞれ違う、米系の名の通った建築デザイン会社に就職したが、白人社会に上手く順応出来ず、悪く言ったら相手にされず、よく昼に連絡を取り合って一緒にランチをしながら愚痴を言い合ったり、励まし合ったりした。”もうダメかもなー” とか、”文化の違いは埋まらないなー” とか。片方が弱音を吐く時は、もう片方が尻を叩きながら。6歳年上の彼に言われた事で、今でも覚えている事は、”I know it's tough, but let's be good listeners. (お互い大変だけど、とにかく何を言われてもまずは聞く耳をもとう。)” 頭ごなしに拒絶するのは誰でもできるが、誰の得にもならない。感情的にならず、嫌でも聞いて、家に帰ってビール片手に落ち着いて自分の考えと、言われたことを比較しよう、と。その後、どちらを選ぶか、どういう風に取るかは自分達に権利がある事だから。

その後、僕は幸運にも段々と価値を見出してもらえ、色々と優遇して貰える様になり、彼を僕が働いていた会社に推薦し呼び込み、1年だけ一緒の職場で働いた。なぜ1年だけか?1年後、彼の元の上司が数百万の小切手片手に彼を呼び戻しに来た。その後彼は、昇給などを含めた自分が戻る為の条件を全て書面におこし、会社側にサインさせ、”もう一度挑戦して来る” と、堂々と元の会社へと戻って行った。僕はその後他の会社に転職したが、送別会の時、”あんた、社長陰で泣いてたよ。” と社長秘書から言われ、家に帰ってから感謝で涙が止まらなかったのを今でも覚えている。

2004年の北京オリンピック後、二人で北京でデザインオフィスを構える計画で話し合っていたが、それは実現しなかった。

今は中国人の怪しい坊さんにしか見えないが、一生の戦友。

”韓国に帰ると、皆が中国人と間違えてお土産を売りつけてくるんだよ。” と言っていた。






7日間の出張中の4日間は、上海から車で2時間半走ったとある町にプロジェクトのミーティングで行っていたが、こんな感じで今回の中国出張は終わった。

中国は、まだ今のところビジネスチャンスは沢山あるとは思ったし、今回実際に上海に行ってみて、また少し世界が狭くなった。

でも、やはりカリフォルニアに戻って来るとホッとする。


2014年6月21日土曜日

中国出張 - 2: 台湾空港のトイレに潜む魔人

現在、LA時間午前2時。完全なる時差ボケに対抗しようとせず、素直に流されてみる事にし、前回の続きを書きたいと思う。

ロサンゼルス空港で猫に乗ってから12時間後、台湾時間の午前6時20分、飛行機は台北の空港に到着。ここで乗り継いで上海へ向かう。Hello KittyにGood-bye し、メルヘンの世界から現実へと足を踏み出す。外から見ると、やはり機体には大きなキティーちゃんが。数年前に仕事でサンリオのLAオフィスを訪れた際、受付に身長160 cm程のキティーのぬいぐるみが立っていた。この子はデカいと可愛くない・・・

ラウンジで3時間程メールチェックやらFBチェックをして時間を潰し、上海行きの便の搭乗時間が迫って来たのでゲートへと向かった。歩いていると左手にトイレが。”ちょっと寄っておくか” と思いコンピューターの入ったバッグを右肩にかけ中へと進むと、まず手洗い用のシンクが2個並んでおり、その奥に小便用の便器が3個並んでいるのが見えた。あとは反対側に個室が2個あるだけの、綺麗とは言えない小さなトイレだ。

(このブログを読まれている清楚な女性の皆様へ。下のスケッチをご参照ください。)



小さなこのトイレの一番奥の便器は、30代位の帽子を被った男が使用中。一番手前の便器は、
黒いヨレヨレのスーツを着た身長165cm程の小柄な中国人らしきオジサン(推定年齢55才)が使っていて、便器とシンクのカウンターの間に、食べ物らしき物が入っているビニール袋が上に置かれた黒いキャリーバッグを立てている。あまり両側を人に挟まれて用を足すのは好きではないが、そこしかなかったので仕方なく空いている真ん中の便器を使うことにした。

用を足していると、右側にいるヨレヨレスーツのオジサンの動きが少々気になり始めた。通常、男性が用を足している間は、小便小僧の像を想像して貰えばわかる通りあそこを手で支えている必要があるので手は殆ど動かす事はない。しかし、隣のオジサンは何やら右手を何度も少し上げたり下げたりを繰り返している。ブツブツ何か独り言の様な事も言っている。少々気味が悪い。用を足している間の男は実はかなり無防備で、何かあっても動き回ったり逃げたり出来ない。間のついたては、背の高い僕には殆ど意味はない。もし変な人だと怖いので、取り敢えず少しだけ顔を右に向け、これ以上回らない所まで目玉を右に動かし、恐る恐る何をしているかチェック。

何もしていなかった...
僕が今まで培った知識と情報で理解できる範囲の事は、何もしていなかった...

え~~~~~!!!!??? マジで!?




オジサン、便器の水で、ち〇こ洗ってる・・・





そう、ヨレヨレスーツのオジサンは、右手を便器の中の水が出てくる所に何度も持って行き、その手で水をすくうと、独り言を言いながら、自分のあそこにパシャパシャとかけているではないか。

(このブログを読まれている清楚な女性の皆様へ。下のスケッチをご参照ください。)



いや、さすがに汚いって・・・マジで。洗いたいほど痒いの?何か病気でももらったか?いやーでも余計病気になるって・・・ 他にも数人トイレの中にいたが、この行動に気付いているのは、どうやら僕だけらしい。

注意点

1:まずは公衆便所の便器に素手を入れるべきではない。
2:その水でち〇こを洗うべきではない。
3:で、その手、どうするの?


とにかくその場を1秒でも早く離れたかったので、用を終えた後、急いで手を洗いにシンクへと向かった。2つあるうちの向かって右側は使用中。左側、つまりオジサン側は空いている。どうしようか考えていると、ついに恐れていた事が起きた。”おててブルブル” である。そのオジサン、濡れた右手についた水をはらう為、ブルブルと激しく右手を振り出したではないか。

うわ、ちょっと、マジで、だめだって! 
一滴でも当たりたくない!
見えない水滴を避けなければ!
気分はマトリックスで弾丸を避けるキアヌ・リーブス。

この魔人の攻撃に勝ち目はない。右肩から落ちそうになるカバンを抱えながら、手も洗わずに一目散にトイレから駆け出した。

無いとは思うが、もしも ”ここではこれが常識です。” と言われたら、それ以上返す言葉はなくなる。アメリカには多くの異なる民族が暮らしているので多様な人間に慣れているつもりでいたが、世界にはまだまだ色々な人がいるな、と改めて実感させられた。

心身共にどっと疲れを感じながら、その後何とか上海到着。
そこは想像以上に大都会だった。



下の写真の右端に黒く見える現在建設中のねじれた超高層ビルは、大きすぎて、街の外観を壊しているとしか思えず好きではなかった。




次回、”娼婦に買われる” 

乞うご期待。

2014年6月20日金曜日

中国出張-1: 猫パンチ

1年程前に中国のディベロパーから声が掛かり、それから話を進めて来た中国でのプロジェクトミーティングの為、上海から車で2時間半程走った所にある町へ行く事になった。詳細は明かせないが、140,000平米の更地にホテル、ショッピングモール、美術館、その他商業施設をプランして建てる建築プロジェクト。普段はインテリアデザインを主に行っているが、建築会社で働いていたため建物自体のデザインも行う。とかく外部や周辺への影響を主に考えられてデザインされる建築に対し、中身や人間との関係性、感情などにもっと気を配った建物を作ってみたいと考えていた。

また、建物と中身、全体のイメージなどが合っていない商業施設などが多く残念に思う事が多々ある。それは、それぞれの部門を個々に発注して行うケースが多いためでもある。今回のプロジェクトは、全体のブランディングと建築インテリアを融合させるため、厳選した知り合いの専門家を集め、香港の会社、CARDEA HOLDINGS LIMITEDの基に、インターナショナルなチームを構成した。

このブログにたまに出現する、中国生まれでLA在住、日英中国語が堪能なチームリーダーで、CARDEA HOLDINGSのCEO, Mさんがブランディングを行い、日本生まれで既にアメリカ生活の方が長くなった僕が、ベトナム生まれでサンフランシスコ在住の気鋭な建築家Tと一緒にプランニング、建築、インテリアの指揮をとる。上海在住でUCLAにも通っていた中国人のCさんが現地でコーディネートを行い、上海に最近オープンした高級モール、Kerry Centerのコンサルティングを行った上海のブランディング・マーケティング会社にも協力を依頼し、チームに入ってもらった。

とても大きなプロジェクトなため、自分を奮い立たせながら大きな意気込みと共に夜中1時半のフライトを空港で待っていると、目の前に、機体に馬鹿デカいリボンを付けた猫が描かれた飛行機が到着。

HELLO...

K…KITTY

カウンターでチケットをもらった時から少々嫌な予感はしていた。しかし、まぁ飛んでしまえば外から見られる訳でもないし、”ま、いっか。” と思いながら乗り込んだ僕の想像を完全に覆すサンリオ+EVA航空の攻撃がここから始まろうとは、予想だにしなかった。

枕:キティーちゃん
ペーパーナプキン:キティーちゃん
目の前のテレビの映像:キティーちゃん
ゲロ袋:キティーちゃん

食事が出てくれば、
ナプキンホルダー:キティーちゃん
爪楊枝入れ:キティーちゃん
前菜のつけ添えのカブ:キティーちゃん
メインのつけ添えの人参:キティーちゃん











なんなんだ一体!ここはサンリオピューロランドか?
それとも、EVA航空はオジサン禁止なのか?

体中に猫パンチを受け続けグロッキー状態な上、LA時間では朝方だったので寝たかったが怖くて乗り越られていない壁がまだ一つ。
そう、ブランケットだ!この勢いでは、このビニールを開けて中のブランケットに大きくキティーが描かれていても何の不思議もない。しかし、それを掛けてこの俺がスヤスヤと眠りについているところを、横を通る他の乗客やフライトアテンダントに見られるというのか・・・?もし裏返して使っていれば、それはそれであからさまにキティーを意識していると思われて、かえって注目を集めてしまうかも知れない。最悪のパターンとして、ブランケットにはキティーの胴体だけが描かれていて、自分の体の上にかけると、自分がキティーにされてしまうというパターンもありえる!

どうしよう、使わないで寝ようか?でも寒い・・・

意を決して恐る恐るビニールを開け、中からグレーの柔らかいブランケットをそっと引っ張り出した。まず見えたのは”EVA AIRLINE"の文字。ゆっくりと開いて行くと、無地の状態が続く。
まだ油断はならない。もしかすると、これは裏側かも知れない。思い切ってバサッと開き、両面確認。

無地だ!勝利と共に、少々残念な感じを覚えたのは、きっとこの時点でサンリオに洗脳され、”キティーと一緒にスヤスヤ眠る42歳のおっさんが、もしかしたら少しかわいいと思って貰えるかも知れない” などと心のどこかで思っていたのかもしれない。

その時、一人のフライトアテンダントが、
"Sir, would you like another blanket?  (もう一枚ブランケットをお持ち致しましょうか?"
色々と確認していたので、これ一枚では寒いのではないか、と考えていると思われたらしい。
次のブランケットにキティーが描かれていたらとんでもない事になるので、丁重にお断り。

プロジェクトへの熱い思いは、猫砂を思いっきり掛けられて消沈、そして就寝。


次回 ”台湾空港のトイレに潜む魔人” 

乞うご期待。































































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