2011年6月29日水曜日

The Perfect Office - パーフェクトオフィス

先日ウォールストリートジャーナルに The 'Perfect' Office という記事が出た。プライベートオフィスはどうも他のオフィス部分から隔離されてしまう。社内の人達ともっとコミュニケーションを円滑に行えるプライベートオフィスを提案する、という企画。

Gensler, Studios Architecture, PDR, VOAという大手の建築会社がそれぞれ15feet x 15feet(約4.6m x 4.6m) の箱の中に ”パーフェクトオフィス” を提案した。

記事へのリンクはここをクリック

簡単に紹介すると、
Gensler
(オフィス利用者の設定: シニアマネージャーやワーキングマザー)
5スターホテルの様に、モダンで洗練されたデザイン。仕事上でコラボレーションなどがしやすい様にテーブルを用い、壁に大きなモニターを入れた。ガラスのスライディングドアーを開ければ、他の空間と繋がる。


Studios Architecture 
(オフィス利用者の設定: インターナショナル・メディア会社の女性CEO)
混沌とした世の中において、オアシスの様に、光や風が通るエコなデザイン。チームワークがしやすい様にフレキシブルな椅子を置いた。


PDR
(オフィス利用者の設定: エネルギー関連、又はコンサルティング会社のミドルマネージャー)
家のリビングルームの様な雰囲気。一人でもチームでも仕事が出来る”キッチンテーブル”を設置。ガラスのドアを開けっ放しにし、その他のオフィス部分との境を消した。


VOA
(オフィス利用者の設定: 従業員150人のファッションデザイン会社のCEO)
可動式のラック、テーブル、収納に囲まれたフレキシブルな空間。夜、帰宅前には全てを収納してしまい、次の日の朝フレッシュな気分でデザインを始められるというコンセプト。クリエイティブの中心(エモーショナル・センター)の象徴として、テーブルをハートにした。
(デザイン部長のニックは僕の学生時代の先生でもあったので良く知っているが、とてもおちゃめで自由な人)

今回の企画は、社内の他の人たちとのコミュニケーションをもっと円滑にする、という目的に基づいたものなので、皆オフィスの壁1面を開け放てるデザインになっている。自分の家の一部の様なデザインを提案したPDRのもの以外は、何とも思わない。

正直なところ、皆が皆オープンな感覚を望んでいるとも思わない。自分のオフィスから一歩出たらいきなり ”公共の場” になるのだから、自分のオフィスぐらいはとてもプライベートな方がメリハリが出来る気がする。昔から思っているのだが、アメリカではとかく何でもオープンスペースが良いという考え方がある。日本でもその流れになって来ている気がするが、そんな中、日本では隠れ家的なレストランなどが流行ったりもする。もちろん文化の違いがそこにはある。余談だが、西麻布に本店を構える権八のビバリーヒルズ店は、アメリカで隠れ家的なレストランを目指し、本当に隠れてしまった・・・。

いつも思うのだが、根本的に、”オフィス” という物、そして、”仕事” と言う物に対する概念が凝り固まっていると思う。人間は社会の中の一員として生きて行くために働く。家は自分や家族の場所で、オフィスは仕事をする所。オフィスで仕事をしたら、家に帰る。これの繰り返し。現代のちょっと冷めた社会では、”オフィスは自分が勤める会社が持っている場所で、自分個人の場所ではない” と言う考え方ではいつまでたっても一般社員の本気の忠誠心はうまれないと思う。そして、なんでもオープンにされてしまった環境では殆どの物が ”共有物” で、個性を出すのすら難しくなる気がする。Genslerの提案には、マネージャーがそのオフィスを使っていない時は他の人が使用出来るという設定が入っているが、僕のオフィスを他人が使っていたら、と考えると我慢できない。

仕事と普段の自分の生活を混同させない、という考え方は精神衛生上良い考え方だと思う。しかし、それだからと言って ”家は自分の場所、オフィスは会社の場所”、という考え方が本当に正しいかは疑問だ。

この仕事をしているととても良く分かるのだが、オフィスデザインを依頼されるクライアントと、個人住宅のデザインを依頼されるクライアントの熱意があまりに違う・・・。もちろん個人住宅の場合、自己資金なので気持ちは分かるが、1日に8時間過ごす自分の職場も同じぐらい気にすれば良いのにと、いつも思う。

テクノロジーが発達し、カフェや車の中でも仕事が出来てしまう昨今。オフィスの存在意義は希薄になり、そこにわざわざ個性的なインプットをする意味など無いのか。そうは思わない。殆どの人はやはり会社に行って仕事をする。

実は、こんな真面目な話をする気は無く、ただ単に自分にとってのパーフェクトオフィスって何だろう、と面白半分に思っただけだった。

で、描いてみた。




眼下に高層ビルを見下ろす窓の前にバーカウンター。フカフカの絨毯が広がる部屋の中央にエーロ・サリネンのホワイトマーブルのテーブル。圧迫感を無くし透明感を増す為に壁はバックペインティッドグラス(ガラスの裏面がペンキで塗られている物)で覆い、輝く黒いシャンデリア 仕事が出来て気が利くアシスタント。


これじゃ仕事しないだろ?と言われそうだが、実際、物凄く仕事すると思う。


まぁでも、本当は、この前も書いた様にハイテク機器を備え付けた山小屋が僕にとっての
”パーフェクトオフィス”。

Hiroki

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