この頃、デザイナーとしての進路を考える20代前半の人から相談をよく受けます。
1ヶ月ほど前も、以前僕の所で働いていたある人から相談のメールをもらいました。
このメールへの返信を書きながら、色々な人からの質問に対する回答が多く含まれていると思ったので、一般的な質問に対する回答として修正を加えながら下に載せてみます。
「今のままで良いのか悩んでいます」
まじめに仕事や自分の人生と向き合えば向き合う程疑問が出てきます。特に貴方の年齢はそういう時期です。悩む事が当たり前、又は、悩める自分がいて良かったと思ってください。
知っての通り、僕は日本で仕事をした事が無いので、自分のアメリカでの経験からしかアドバイス出来ません。
「内田さんはプロのデザイナーになるためにはどういった所でどんな事を積み重ねていく事が大切だと思いますか?」
それは、貴方の将来の目標次第です(5年後の自分)。
夢は?
デザインが好きだからデザイナーとしてずっと働いていたい?
自分が作った空間に来た人の笑顔が見たい?
デザイナーとして不自由なく生きていけるお給料が欲しい?
現実(野望と戦略)は?
―この業界の中で、自分は何を将来出来るようになっていたいのか。
貴方は、将来どうなっていたいのですか。有名な設計会社で昇進してデザイン・ディレクターなどへの道を歩みたいのですか。それとも、無名な会社でも良いからデザインが出来ればよいのですか。会社の知名度に関わらず自分が好きそうなデザインをしている所で働いてさえいられれば良いのですか。将来独立したいのですか。などなど。
携わりたいプロジェクトや将来の方向性などにより、進路のアドバイスは出来るかも知れません。
携わりたいプロジェクトや将来の方向性などにより、進路のアドバイスは出来るかも知れません。
日本ではまだ難しい考え方かもしれないけど、雇われている間は、会社の為に仕事をするという考え方を捨てるとその日その日の自分の方向性が見えて来ます。会社の為ではなく、自分の将来の為に仕事をするのです。貴方が今の会社でやっている作業などの知識や経験は将来何かをデザインする上で必ず役に立つます。会社でやらされているのではなく、自分の経験を将来の為に蓄積しているのです。楽しく、好きなデザインだけしたければ趣味としてやるのが一番でしょう。
会社から見ても、ただ単に”会社の為に!”などと言っている人よりも、自分の為に自分の能力を伸ばす努力を怠らない人は好ましいはずです。そういう人は、結果的に会社の為になっており、新しい物も呼び込んでいると思います。
「内田さんから見て私は成長出来ましたでしょうか?」
貴方はとてもまじめな人です。仕事をしているとその人の性格が良く出ます。短い間に色々と新しい物事を覚えたよね。
何を持って成長と言うかは分かりません。人間なので周りの人と比べたり、人にどう思われているかは誰でも気になるだろうけど、そんな中で、一番大切なのは人にどう思われるかではなく、1ヶ月前、1週間前、そして、昨日の自分よりも一歩でも前に進めているかだと思います。
もし、”とても成長したよ” とやさしい言葉をかけて貰いたいだけなのであれば、聞く人を間違えています。
以前の自分と比べる為には常に自分を客観視する必要があります。もう一人の自分を創って、他人事の様に自分を
見つめてみると答えは結構簡単に出ます。なぜかというと、皆、自分の事は棚にあげるけど人の事になると口うるさくなれるでしょ。
他人にどう思われているかに対してはきちんと耳を貸した方がお得です。コンサルタントやアドバイザーなんていう人にお金を払わなくてもただで意見をもらえるのだから。Good Listener になるのです。言われて直ぐは感情的になってしまうので、その場はよく話を聞いて、家に帰ってから一人でビール片手に “そっか、あの人にはそう見えているんだ” と自分の意見やその他の人の意見と比べて吟味し、自分なりの結論を出すのが良いでしょう。
言われたままを信じる必要はありません。そのままを信じると、何か問題が起きた時に “だって、あの人がそう言ったから!” と人のせいにします。自分の意見であれば、自分で責任を取る覚悟が出来ます。
僕のこの話も決してそのまま信用する必要はありません。
「私はどんな事が向いていて又、どんな事が苦手に思えました?又は、職自体向いていないと感じました?」
貴方は自分でどう思いますか?その職に向いているかいないかなんて関係ありません。それは貴方が自分で決めることです。もし誰かにこの仕事にむいていないと言われたら、 “そっか・・・” と下を向かずに、 “てめぇ~見てろよ!” と逆に真上を向いて下さい。
貴方にはその価値があるはずです。そして、自分でもそれは分かっているはずです。
口でごちゃごちゃ反論しても無駄です。この業界は全て絵や図面に出ます。反論している時間があるのなら、影で努力し、黙って仕事をこなし、目に見える形で表すべきです。目に見える形を目の当たりにした人は、もう何も言えなくなります。
絵が上手に描ける様になりたい様だけど、プレゼンテーションでクライアントに見せるための絵など、練習すれば誰でも描ける様になります。僕から言わせれば業務的な絵です。その先の個性のある絵に関しては、その人の内面から出て来る物をどう紙の上に表現するかなので、自分で上手く表現できたと思えればOKだと思います。
僕の行った大学はファインアート(絵画や彫刻など)では成績がありませんでした。アートに1、2、3、4、5、などの評価は出来ないという理由からです。その結果、独創的な作品を生み出す力を皆つけて貰えたのだと思います。大変感謝しています。
プレゼンテーションで使う様な絵がもっと上手くなりたければ、本などを見て練習してごらん。将来的にその絵の中に自分の個性が出せる様にる事を目標にね。上手いか下手かも、自分で気付ける様になってください。
最後に、僕がよく皆に言う事は、知識を沢山持ち合わせて得意になっている人がいるけれど、今の世の中分からない事があれば携帯電話一つで、ネットを通して一瞬で調べられます。そして、仮に今自分が何かを知らなかったとしても、教えてもらってそれを知れば、その教えてくれた人と同じレベルに一瞬でなれます。
でも、経験は違います。自分で体験し、それに対して自分なりの感情や意見を持つ。
これは、自分だけしか持ち得ない物です。沢山色々な物を見て、経験をして、人やメディアから得た情報だけを頼りに話や行動をするのではなく、自分の経験を基に考え方を形成した方が僕は余程面白いと思います。それが周囲の人と違えば違うほどね。
Hiroki
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