2017年7月2日日曜日

中国出張 - 蘇州 新光三越

6/1-6/23までという長期日本出張中に、今回のメインイベントとなる、中国の蘇州 (Suzhou)へ行って来た。上海で迎えの車に乗り、西へ1時間。着いた場所は、近代的なビルが立ち並ぶビジネスエリア。

建設中の高層ビル

 蘇州文化芸術センター



巨大なコンベンションセンター(写真はほんの一部)

ホテルの部屋から見えた、中国へ行く度に驚かされるコンドミニアム群。
ここのお値段、日本円で1億円前後・・・

泊めて頂いたハイアットの吹き抜け

ホテルから10分も歩けば金鶏湖。
大きな湖だと思っていたが、地図を見るとこれでも小さい湖の一つ。



ホテルの目の前に堂々と建つこの建物が今回の目的、"新光天地"。






台湾の財閥、新光グループが日本の百貨店の三越と共同出資で1991年から"新光三越" という百貨店を台湾国内で展開しており、そこから中国本土へ”新光天地”として進出した。そのうちの一つが、水の都、蘇州に2年前にオープン。7階建てのデパートと、20数階建てのオフィスタワー。ロサンゼルスで建築を学んだ新光の社長が、自身の想いを形にした建物と伺った。




このブログにたまに出てくる、ロサンゼルスで知り合った才女のお友達、Mさん(本名、真智子さん)がこの新光グループの社長さんご家族と昔からのお友達、という事で2年前のオープン以前からずっと色々とミーティングを重ねて来た。新光天地の顔とも言える一階部分に、新光初の自社経営となるセレクトショップエリアが作られた。彼女は伊藤忠時代に培った経験と実績で、主にアメリカの気鋭なファッションブランドとの交渉、商品の目利き、輸入、そして販売の統括を任されている。日中のハーフの真智子さんは蘇州生まれなので、ここは彼女の故郷でもある。

オープン以前から、一階部分のマスタープランなど真智子さんと一緒に色々と案を出して来たが、大きな会社の様々な政治的理由で話が進まず、僕から見ると全く望ましくないレイアウトとデザインで2年間が過ぎた。その後、真智子さんと小規模や大規模の改装の話を重ねてきたが、それも進んだり止まったり・・・

きちんと契約を結ぶまでは行かない。と言い続けてきたが、いい加減面倒なので、”中国旅行だと思って、取り敢えず一回見に行くよ” という事で今回行って来た。

クライアントが大企業でも特に気負いしないのは、20代の時にGary Lee PartnersやSOMで、ドイチェバンクやマッキンゼー・アンド・カンパニー等々の大きなプロジェクトの隅っこにいさせて貰い、ミーティング等を見させて貰っていたお陰だと思う。特にSOMのSan Francisco オフィスでは、北京オリンピックに合わせて数多くの中国のプロジェクトをデザインをさせて貰った。どちらの会社も、入る時に ”将来独立する予定なので、色々と盗ませてもらいます。” とはっきり言って来たので、本当に良い教育をして貰った。有難い。

内装の一部。

本物の植物で覆われた壁。


 かなり広い、自営のセレクトショップエリア






2階から見下ろしたところ。
1階中央には化粧品ブランドのブース。


7階のレストラン街にあるイタリアの老舗、Cafe Florian。
これは驚くほど豪華に作られている。
ストロー1本までイタリアから輸入しているらしい。




2階にある和食レストラン。
副社長さんが元々三越にお勤めだった日本人の方で、
このレストランで夕食のお誘いを受けた。
店の作りはとても豪華。食事はノーコメント。


地下のフードコートのランチ時間。
運が良ければ空いている席を見つけられる、というぐらいの盛況ぶり。
飲食系の売り上げはとても良いらしい。



さてさて。店内を歩いているとあちこちで感じられる違和感。どんなに良い場所に大きな格好の良い建物を建てても、結局使うのは背の高さが5mの大男ではなく、多くはたったの1.5-1.8m位の人間。目線で見える物の形や明暗、聞こえる音や漂う香り、手で触った感触、人の動作に合った物の配置等が建物自体と不調和を奏でると、ただただ町の中に大きな空っぽの箱、又は昔のコピーが残る。だからインテリアデザインは大切だと信じている。

あまりここで問題点等を公表する事は好ましくないので詳細は省くが、フロアのディレクターの方に一階部分のマスタープランのやり直しと、新たなレイアウトの提案をさせてもらった。

今回は、折角蘇州まで来たのでその場にある物で出来る範囲の修正をしよう、という事に。社員の方の殆どは中国語しか理解できないが、中には日本語を少々、又は英語を少々、という方々がいらしたので、日本語、中国語、英語が飛び交う。真智子さんはそれら全てをほぼ完璧に話せるので、僕とも日本語で話したり、英語で話したり。中国人には中国語で通訳してくれたり。一体この人の頭の中はどうなっているのやら。

言葉が通じなくても、紙一枚あれば話が通じるのが僕の仕事。ホテルの部屋から持ってきた紙にスケッチを描いて、中国人の課長さんに見せる。

”鎖にはそれぞれライトが当たる様にした方が良いです。”

”通路の最後には必ず焦点になる物を置きましょう。”

”天井まで届かない低いパーティションを置いて、
ブランドを分ける事をお勧めします。”


不慣れな店員にバラバラに置かれてしまったブランドを、真智子さんと相談してまとめたり、人を奥まで引き込むためにジュエリーケースで道を作ったり、



女の子の服を着たマネキンを抱えると不思議な感じがしたり・・・
なんて思ってたら腕が外れて床に落ちたり・・・


倉庫に置いてあった大きなフレームを持って来てバックグラウンドにしたり、


適当だったスポットライトの向きを全て整えたり、
言葉が通じないので親指を立てて”Good!" したり、


5時間程バタバタと動き回った。店長さんにもお褒めの言葉を頂けた様で、まぁ、取り敢えず今回のつぎはぎの修正はここまで。この修正と関係合ったかどうかは分からないが、
セレクトショップエリアのこの日の売り上げは、普段の2倍だった。色々と問題は起こるだろうけど、今後、本格的な改装案を提出して前に進める予定にはなっている。


最後に、真智子さんに、蘇州の昔の街並みが残る場所に連れて行って貰った。

地下鉄は日本より綺麗。
テレビ画面に、好きな人への愛のメッセージを流して貰えるらしい。

建物は古くて表向きは情緒があるのだが、観光地化されているので物凄い人。


蘇州が”東洋のベニス”と呼ばれるゆえん。



”もう少し暗くなると、木がライトアップされるよ 、濃い緑色に・・・”
と言うので、
中国特有の不自然なライトアップを是非とも見たくないので、
裏道に入って普通の人々の生活の中を歩く。

これ、昔ながらの家屋に作られた本屋+カフェ。渋い。



裏道の所々にある、昔使われていた井戸。


3日間の中国滞在の後、横浜に泊まった。生まれは東京だが、育ったのは横浜。
よい。横浜はよい。異国情緒と文化を肌で感じられる。ギシギシしていないし、きちんと風が流れている。



今回は日本にいたのが長すぎた。知らないうちに多くのストレスを感じていたらしく、体調をかなり崩した。ロサンゼルスに帰って来て直ぐに予定されていたアトランタへの出張をキャンセルし、しばし休息。

さっき散歩してきた近所の湖。やっぱりここが一番ホッとする。
暫くここで、英気を養う。




2017年2月21日火曜日

Japanese Seafood Restaurant - Arts District, Los Angeles

ロダンぜルス、ダウンタウンの中心から東に向かうと、リトル東京がある。それを過ぎると、10年前までは昼間でも足を踏み入れるのを躊躇ったが、今ではお洒落なカフェやコンドミニアムが並ぶ Arts District がある。その中心に現在新たな洒落たショッピングモールが作られているのだが、その道を挟んだ真向かいに、日本で昭和初期に開業し築地でも名をはせる、とある魚屋さんのLAオフィスがある。並びはBlue Bottle Coffeeや ZINCというこれまた洒落たレストラン。

一見倉庫の様にも見えるが、景観を壊さない様に普通の通りに普通にあるところが格好良い。



周りの建物はこの様な感じ。この雰囲気の中にオフィスや店舗が入っている。


魚屋さんのオフィスの一階部分を、レストランに改装するプロジェクトのお話を頂いた。もともと雰囲気のあるこのエリアで、コンクリートやレンガ造りの建物の中になんとなく格好の良い物を作るのはそれ程難しくない。インダストリアルっぽい雰囲気を出すのも簡単。それはBlue Bottle Coffeeも隣のZINCもやっている。上手く”日本” という事と、”漁師” という事を間接的に表現できないものか、と夜はぐっすりと眠りながら考え続ける日々。

既存の天井の上には、立派なコンクリートの梁。



この梁が、綺麗な升の目を作っていた。
綺麗だ。
綺麗だ。
綺麗だ...


壊したい・・・



二つの入口からの流れを考慮しながら、グリッドを壊すことにした。まとまった中に全く違う要素の物を落とし入れる事により、新たな調和が生まれてお互いが引き立つ。

大きく力強いマグロを扱うこのクライアント。安易な ”デコレーション” になりがちな直接的なイメージを避けながら、力強さの中に日本の伝統を持ち、ロサンゼルスのArts Districtという場所に、主張し過ぎずに存在し、そして何より、アメリカ人に訴えかける物を作りたい。



木を使って色々と試してみたが、何か大人しくて、違う。



日本特有の繊細さは、それはそれでもちろん素晴らしいしアメリカ人にも受けは良いと思う。ただ、今回は海の男、”漁師”。

そこで材木屋へ行き色々な木材を見た後、木の厚みや幅、支柱の太さなど、最初に考えていた物よりも大きな物にする事にした。また、木の間の間隔やデザインにも変更を加え、特徴のある物に。そして、予算内に収まるかは不安だったが、くぎを使わない日本の伝統、”ほぞ接ぎ” でこれを作れないかと考えた。また、奥のテーブル席の横の壁には、幅4メートル、高さ2メートル程のアートを二つ、手作りで作らせて貰う計画も立てた。





細かなところに入る前に、まずはこのレイアウトでロサンゼルス市のBuilding and Safety Department とHandicap Department , Fire Department, Planning Department, Redevelopment Departmentからそれぞれ建築許可を取るための図面の作成、と同時に保健所への提出用の図面、そしてMechanical(空調)、Electrical (電気)、Plumbing (配管) のエンジニアにそれぞれの許可を取ってもらう事に加え、構造エンジニアに外壁の一部撤去と新たなサポートの計算書を作って貰う。


と、ここまで来て、この場所が日本政府のとあるプロジェクト用に又貸しされる事が急遽決定し、レストランのプロジェクトは中止に・・・

ま、そんな時もある。頂く物は頂いて、アイデアはまた何か他の時にでも使うとしよう。

とりあえず、今晩は寿司だ。








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