以前、銀座にデザインさせて頂いたHot Studio All5 (ブログ記事)から数年開けて、20年の経験の中で日本国内では2つ目のプロジェクト。一般受けしそうな店舗を作るのはそれ程難しい事では無い。綺麗に ”装った” 店ばかりが立ち並ぶ東京に、手作り感のある、”店舗” というよりは、ちょっと怪しさすら感じる ”工房” を作ろうと話がまとまった。海外に住んでいる僕にとっては、自分の手を直ぐに加えに行けないので少々歯がゆく感じるやり方ではあるが、今回は試しにやってみる事にした。アメリカ国内のプロジェクトでも、こんなに自分の手で作った物はなかった。
まずは、コンセプトを固めるために、物語を書く事から始めた(ブログ記事)。頭の中にあるイメージを、人に伝えるための最初の方法。
挿絵用のスケッチも描いた。この時点では、店内の大まかなイメージしか頭にはない。
同時進行で、現場の既存状況を工事業者さんとLINEを通して確認し、新たなレイアウトを作成。いつも困るのは、日本語で建材の名前や建築用語が分からない事。業者さんに教えて貰い、勉強させて頂きながら進める。
店内の仕上げに関しては、かなり迷った。作り込んだ感じは欲しくない。どこまでやったらやり過ぎなのか、どこまでやらないと思い描いた物にならないのか...
さらに同時に、新しいコムパリのイメージとして、Family Crest (家紋)を加える事を提案し、オリジナルのデザインを考案。
"COMME PARIS"の "C"を三日月に、"P" を帆船に見立て、左右の羽で夜空へ飛び立つ、童話にでも出てきそうな、”三日月の夜の新たな船出” を表してみた。冠は、お店の看板商品のカヌレ。帆船の梶は泡だて器。バックグラウンドはフランスの国旗に見えるが、色も順番も向きも違う、コムパリの旗。
日本の看板屋さんに、外の吊るし看板の見積もり依頼をしても返事が来ない。また、返事が来ても、納期が長い上に値段が高すぎる。
「じゃあ、いいよ。作るから。」
やった事は無いが、出来ない理由が見当たらない。という事で、看板も作成。
まずは裏面から。文字を印刷した紙を貼り、焼きながら木に印をつけて行く。
その後、印を焼きながらなぞり、 "COMME PARIS" という文字のアウトラインを書き、文字の内側を全て焼いて行く。
木をステインし、色合いを整えながら木目を出す。これには、多少の防水効果もある。
裏面はこんな感じ。
コテの先端の太さを変えながら、 表も同様に焼いて線を出して行く。
次に、立体感を出す為に、小学校以来の彫刻刀で彫って行き、
アクリル系のペイントで色を入れる。単色で塗ると印刷の様で味が無いので、絵画の様に色を混ぜながら塗り、筆の跡も残した。
つづく。
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