昔働いていたSOMでは、プロジェクトの多い時はいきなり人数が2倍になり、終息すると隣の人が段々と姿を消して行った。入社当初に、周りにいる人の名前だけでも覚えようとしていたら、現在のパートナーで、当時一緒にSOMで働いていたピーターに
”入れ替わりが激しいから覚えても意味無いよ。”
と言われたのを覚えている。
上の方の人間はそれ程入れ替わりが無いので、上手くコントロールしながら仕事のクオリティーを保っているのだろうが、正直なところ、アメリカの大手コーポレーションのこのやり方を嫌っているアメリカ人も多い。
そんな中、中小規模のデザイン会社は、自社で社員を抱えずに同等のクオリティーや考え方を持っている会社と、プロジェクトベースでコラボレーションして行く方向にどんどん移行している。我々もLAで知り合いの建築会社と必要に応じて一緒に仕事をする。
シカゴでは中規模の建築設計会社が、インテリア部門を自社内に設立するのではなく、コラボレーションして行かないか、と声を掛けてくれているので来月ミーティングの予定。
一昨日は世界中で活躍するダクラス・デボアー (Douglas DeBoer) がわざわざオフィスに足を運んでくれ、将来のコラボレーションについて二人でミーティングをした。気さくで豪快な55歳の彼は、少し前まで100人のデザイナーを抱えていたが、自社で抱えるデザイナーの数を減らし、ファミリーの様に信頼して一緒にコラボレーション出来るチームを作ろうとしている。そんな中、我々に白羽の矢がたった。とても光栄な話だ。彼の作品は実際凄い・・・巷で言われるセレブ御用達のレストランを含め、ホテルなどのホスピタリティーを中心に活躍している。奥さんはファッションブランドのGAPの元デザインディレクター。幼いころから親の仕事の関係で世界中の色々な場所に住んでいた彼にとって、世界を舞台に飛び回って仕事をする事に対して何の抵抗も無い。大きなプロジェクトの場合、2年間程その場所に住み着いて面倒を見る事もあるらしい。
共同でデザインをする時の事や、一緒に新規のクライントにアプローチする話などを含め、色々と話し合った。日本人と仕事をする時と違い、年齢や規模に関係なく対等に話をさせて貰えるので、どんどん話は進み、1時間半はあっという間に過ぎた。
”今日は時間をとってくれて有難う。会って話して、お互い考え方が似ている事がよく分かったよ。是非一緒に仕事をしたいのだけど、君はどう思う?” とミーティングした日の夜に早速メールが来た。
断る理由は何も無い。
”お互いの利益になると思います。是非一緒にやりましょう。” と返事をした。
ミーティングの後、ドアの外まで見送った時によく慣れた会話が。
”あれ?日本人にしてはデカくないか?本当に日本人か?”
”うん、よく言われるよ。”